大松(株)東京店・みんながワクワクする展示会「暁光展」
2020.12.01
創業82年度を記念して「暁光展」を開催中の大松株式会社東京店。
月初めに呉服問屋が売り出しを開くのは珍しいことではありませんが、今回の「暁光展」は、初めてのちょっとワクワクする試みです。
本日、2020年12月1日(火)、2日(水)、3日(木)(※最終日3日は15時まで)開催しているので、呉服店の皆さんは、ぜひ足を運んでいただくと何か新しい発見があるかも知れません。(取材・文:大下直子)
前橋まちなかエージェンシーとのコラボレーション
この企画をプロデュースしたのは、(一社)前橋まちなかエージェンシーの皆さん。「デザインの力で、前橋の「まちなか」から、ニッポンの地方をもっと面白くする」をキャッチフレーズに、日頃、イベントの企画運営や情報発信を通して、街を活性化している方々です。
このメンバーの一人が、前橋の呉服店 小川屋 の社長の伊藤大介さん(写真左)で、「まちづくりはデザインだ! そこにこそ、お金をかけるべきだ」という尊敬するJINSの田中社長の言葉に感銘を受け、さまざまなチャレンジを続けている一人。そんな縁から、前橋まちなかエージェンシーの面々である建築家やグラフィックデザイナーたちを、着物デザイナー森尻春司(もりじりしゅんじ)氏の着物制作の現場へと誘(いざな)いました。
森尻氏が大切にする日本の伝統美と、それを支える職人たちの技術や心意気が、前橋まちなかエージェンシーのクリエイターたちの感性と融合し、ものすごい化学反応を起こし、初めて面白い試みをしたのが昨年9月のこと。前橋のレンガ蔵での、新しいムーブメントが具体的に形になった展示会「伝承展」でした。これまでにはなかった商品の見せ方、これまでにはなかった作り手の思いや、エネルギーの伝え方で、ご覧いただく一般の皆さんの反応が心配でしたが、見事に大きな感動の渦を起こし未来への可能性を大いに感じさせてくれました。
「伝承展」が開催されたレンガ蔵
地元紙誌にも取りあげられました。
これまでなかったチャレンジ
そこから発展して、職人の心意気いや技術の素晴らしさを体感できる一つのカタチを作り上げたのが今回の呉服店に向けた展示会企画。伝承展の主旨に共感をして、共に汗を流して展示会を手伝い、先輩や上司を説き伏せて、自社の企画へと昇華させたのが、担当の後藤はるさんで、通常、問屋の企画としては存在し得なかったこの企画へのチャレンジに燃えています。コロナウィルスの感染拡大の影響もあって、若干閉塞感と焦燥感のある業界にワクワクする情報を届けてくれました。
問屋の案内状を地方都市の商店街が作るという斬新なことが起こりました。
会場にいた、前橋まちなかエージェンシーの舘孝幸さんが、「初めて反物を見たときに、『長い〜っ!』ってビックリしたんですよ〜。こんなに長い布って他にあります〜?」と屈託のない笑顔で、当時を振り返ってくれました。そこで、どうしても長いまま見せたいということで、こういう見せ方になる。
舘さん考案の板を置くための台と展示
舘さんが作り上げた展示の為の台を初めて見たとき、伊藤社長は「跳び箱かハードルでも作ってるのかと思いましたよ」と笑います。
小紋の反物はずっと同じ柄が続いているので、反物を全部見せる必要はないと呉服業界の人間は考えます。全部見せたいという発想はほぼありませんでした。
感じたまま、素直に、フラットに伝え方をデザインすると、こうなるのだということを、反物が長いことに、もはや新鮮な感動を覚えることがなくなってしまった業界の人はどう感じられるのでしょうか。初日の今日、来場の呉服店さんの中には、この展示の台を発注して帰られた方もあったとか。
型紙は、そのあまりの美しさと繊細さに感動した皆さんによって、陰影をスライドで投影して見せるというアイデアに。それだけで、アートだという図案は、案内状の表紙に……、と、当たり前のマンネリの中で販売企画や集客企画ばかりに頭を悩ませていた業界に、一石を投じる楽しくて面白い展示。一般消費者が反応しないわけはありません。
関わるみんながワクワクしている
撤退や廃業はあっても新規参入の少ない業界にあって、クリエイターたちの感性を刺激して止まない新鮮な驚きが、業界人が伝えること、伝え方を忘れてしまった物づくりの現場には無限にありました。新しいスタイルの作品を生み出す着物デザイナーの森尻スタイルが、まちづくりエージェントのプロデュースで、これまで呉服業界にはなかった気づきやエネルギーを感じさせてくれる、最高に面白い空間デザイン、展示会デザインになりました。
何よりも、これまでの展示会企画との最大の違いは、プロデュースしている面々がワクワクして、あまりにも楽しそうにしているということ。楽しい街を作ろうとない知恵を絞ってもがき苦しんでいるのではなく、自分たちがこの街でどうやって楽しもうか? と考えている彼らが呉服の展示会をプロデュースすると、エネルギーとパワーとワクワク感があふれた体験型の展示会企画になる。新しい時代の、新しい可能性を感じさせてくれる提案に、ワクワクしました。
(一社)前橋まちなかエージェンシーのみなさん(昨年伝承展会場にて)
2020年12月1日(火)、2日(水)、3日(木)(※最終日3日は15時まで)
大松株式会社東京店 東京都中央区日本橋富沢町9−8 富沢町グリーンビル4階
電話:03−3664−5501 担当 後藤はる