特別講演会「大嘗祭(だいじょうさい)と日本の布――『あらたえ』と『にぎたえ』」 丸十創業百十四周年記念
株式会社丸十(大阪府東大阪市)
丸十 2019.11.04「株式会社丸十」(大阪府東大阪市、北山典彦社長)は10月31日(木)、創業百十四周年記念特別講演会「大嘗祭と日本の布――『あらたえ』と『にぎたえ』」を大阪中之島の中央公会堂で開きました。
新天皇陛下の主要な皇位継承儀式が10月から11月にかけて行われますが、10月22日には「即位礼正殿の儀」が行われました。また、皇位継承儀式の中でも重要な「大嘗祭」が11月14日と15日に執り行われることから、「大嘗祭」の意味と日本文化の理解を深める講演会となりました。
「丸十」北山典彦社長
「大麻」と絹織物
はじめに、「大嘗祭における『あたらえ』と『にぎたえ』」と題して、NPO法人神麻注連縄奉納有志の会代表の安間信裕(あんまのぶひろ)氏が講演。大麻比古(おおあさひこ)神社(徳島県鳴門市大麻町)をはじめとする多くの神社に、大麻素材でつくられた注連縄を奉納する活動を続けながら、全国で「あらたえ」と「にぎたえ」についての講演会を行っています。
安間氏はスライドを用いて「大嘗祭」の意味とその歴史などについて説明。「大嘗祭」の祭祀具として欠かせない二種類の布ーー「あらたえ」と「にぎたえ」について、「あらたえ」は麻、「にぎたえ」は絹のことを指し、「日本文化の中でなくてはならない布です」と話しました。そして、「あらたえ」は「大麻(おおあさ)」の織物で、「古来より阿波の国忌部氏の織り物を用いることになっています。この大麻の織物を献上する阿波国忌部氏が、今も徳島にいます。二十代以上続く、徳島三木家がその一族です」。
また、大麻織物である「あらたえ」の製作工程についても解説しました。
一方の「にぎたえ」は絹織物を指し、「愛知県三河地方でつくられます」とし、製作工程などスライドを使って紹介しました。
安間信裕氏
日本文化の根底は「命のつながり」
続いて、着物文化研究家で「秋櫻舎」代表の中谷比佐子(なかたにひさこ)さんが「大嘗祭と日本の布」と題して講演。中谷さんは、女性誌の編集記者を経て「秋櫻舎」を設立。きものを切り口に日本の文化、日本人の考え方の基本を学び伝承しています。
中谷比佐子さん
「日本人のものの考え方、生活習慣は『古事記』に始まる」とした上で「『日本文化の根底』をもう一度考え直す必要がある」と話しました。「日本文化の根底」とは何か? 中谷さんによると、それは「命のつながり」としています。命を大切にし、命の尊さを伝えてきた「日本文化の根底は古事記に記されています」。
また、「あらたえ」「にぎたえ」については、麻は縄文時代から日本にある繊維、絹は天皇陛下の御服の絹糸として献上し、それぞれを着用する意義について解説しました。
3人によるパネルディスカッション
講演の後、北山社長と中谷さん、安間氏3人によるパネルディスカッションが行われ、参加者の中から寄せられた「大麻」や「絹」についての質問にそれぞれ答えていました。パネルディスカッション後は参加者全員で記念撮影が行われました。
(文・西本俊三)