「染処古今」四代目安江敏弘氏「伊勢型小紋の話を聞く会」宮崎県国富町「ゆうあいきもの工房」で開催
染処古今」四代目安江敏弘氏
きもの専門店作家 2021.05.01伊勢型紙にこだわったきものを製作する「染処古今」(京都市)四代目安江敏弘氏の「伊勢型小紋の話を聞く会」がこのほど、宮崎県国富町の「ゆうあいきもの工房」(谷山愛子代表)で開かれました。主催は「特選博多織はらだ」(福岡県)。昨年、コロナ禍で延期になっていましたが、今回、マスク着用、手指消毒、換気など感染防止対策を取っての開催となりました。(取材・文:西本俊三)
「染処古今」四代目安江敏弘氏(中央)
伊勢型小紋の魅力を紹介
「染処古今」は1919年(大正8)年の創業。現在、伊勢型紙道具彫り人間国宝・中村勇二郎、錐彫り人間国宝・六谷梅軒、突き彫り人間国宝・南部芳松らの伊勢型紙を使った染めのきものなどを中心に製作しています。安江氏は精緻な伊勢型の技術だけでなく、人間国宝の型紙にふさわしい染めの良さを多くの人に伝えようと、自身が〝語り部〟となり、各地のきもの専門店らを回って伊勢型紙と染めの魅力を語っています。
一方、会場となった「ゆうあいきもの工房」は、長年きもの学院の着付け講師として着付け指導に携わってきた谷山代表が、1人で簡単に楽に着られる「ゆうあい着物」(※)の普及活動をしている中で安江氏と出会い、お互い意気投合。今回の「伊勢型小紋の話を聞く会」が実現しました。
「ゆうあいきもの工房」谷山愛子代表(下段の中央)
人間国宝の型紙にふさわしい色
「伊勢型小紋の話を聞く会」は3日間開かれ(1日午前と午後の2回、計6回)、安江氏は「人間国宝三人衆――中村勇二郎・六谷梅軒・南部芳松」の伊勢型紙と職人技、そして染めのことなど現在の〝思い〟と今回は「人間国宝の型紙にふさわしい色」について次のように話しました。
「はじめに、皆さんに糊置きした生地に触っていただき、その手触りを見ていただきました。その後、この生地に3度染(1回目しごき、2回目草木染、3回目化学染料)を施すことによって光沢あるきれいな色に染めることができるので、その話をしました。また、型紙職人さんは型紙を彫るよりも、彫刻の道具を作るのが難しい。細かい柄を彫るには、刃先も目に見えないほどの小ささです。よく職人は『身体で覚える』という言い方をしますが、刃先が見えなくても唇で見る。見えなくても唇の感触で見るといいます。型紙職人さんは高齢ですが、彫刻刀を作ることや精緻な型紙の技術に関しては身体が覚えているので、刃先が見える。色に関していえばやはり感性が大事になります…」
※「ゆうあい着物」は、身長から割り出した「おはしょり」と小物を一切使用しない点、半じゅばんを使うことなど、洋服の上に着ても違和感のない着方です。現在、お客さま1人ひとりの体型に合わせ簡単に着付けが出来る「ゆうあい着物」を全国の呉服小売店向けにアピールしています。従来の手縫い仕立ての「ゆうあい」とミシン仕立ての「ゆうあい花(はな)・ゆうあい歌(うた)」も展開。「ゆうあい花」はオールミシン仕立て、「ゆうあい歌」はミシンと手縫いを併用した仕立てとなっています。
会場に陳列された伊勢型小紋